確かにお父さんの言い分は一理あるが、しかし真紀さんが本当にやりたいのは今の仕事だ。
お祖父さんのように、町の人達のために身近で力になりたいと考えている。
心臓外科の仕事も大切だ。真紀さんでなければ救えない人もいるのかも知れない。

私と結婚するなら、ボストンで心臓外科の研究を。
このまま藤堂クリニックに続けるなら、私との結婚は認められない。


「親父。俺も良い歳なんだ。いつまでも親の言う通りに動くわけじゃない」
「じゃぁ、朝比奈さんとの結婚は認めんよ。俺だけではない。藤堂一族が認めないということになる」


真紀さんのお父さんだけではなぬ、家族や親戚も?


「うちは医療に大きく携わっている家系だ。そこに認められないと言うことは、お前は医学会で爪弾きにされるだろうな」


藤堂の影響力が強いということだ。真紀さんは医者をやりにくくなってしまうのだろう。


「どうせ、俺が里桜と別れたとしてもすぐに新たな嫁候補を見つけて心臓外科に戻すつもりだろう」


真紀さんの苦々しそうな表情に、お父さんは笑い声をあげた。


「なるほどな。傷心の息子にそこまで手酷くするつもりはなかったが、それでもいいな。本当にうちの息子は頭がいい」