「俺はいずれは里桜と結婚しようと思っている」


真紀さんは落ち着いた声でお父さんにハッキリと言った。
そう宣言してくれたことに、胸がキュウっと締め付けられる。
嬉しさで涙が出そうになった。


「それなら、条件がある」
「条件だと?」
「結婚するなら、ボストンに来て研究を手伝え」


ボストンへ!?
驚いて息を飲むが、真紀さんは無反応だ。まるで、そうした条件を出されることを予想していたように見える。


「親父。何度も言うが、おれは心臓外科には戻らない」
「真紀。何度も言うが、お前は才能がある。町でのんびり小児科なんかをしていたら勿体ないんだ」
「なんかって言うな。子供たちを治すのは大切な仕事だろう」
「心臓外科でも小児は救える。むしろ、お前でなきゃ救えない子供もいるんじゃないか?」