すると、黒いスーツの部下はスッと私に背を向けた。
「私は何も見ておりませんので」
そう言いながら、後部座席のドアを開けている。
なるほど、私が真紀さんに連絡していることは見ない振りをしてくれるということか。
部下は優しい人のようだけど、お父さんはどうなのだろう。
とりあえず、素早く真紀さんにメールを送る。
どこに連れていかれるかはわからないから、状態だけ。でもこの部下の人なら場所を教えてくれるかも知れない。
「どこに行くんですか?」
「来ればわかります」
さすがに場所までは教えてくれないようだ。ため息をついて車に乗り込む。
しばらく走ったあと、見えてきたのは有名な高級ホテルだった。



