なんで真紀さんのお父さんが私を……?
そう思ったが、付き合っているからかとすぐに思い直す。
お父さん自ら私を呼び出すとか、怖すぎる。
「行きたくないです」
「お気持ちはわかります」
意外なことに、部下だという黒いスーツの男性は私に同意した。
30代後半くらいの渋い顔をした厳ついタイプの人なのに、私に向ける顔は同情的だ。
「じゃぁ、見逃してください」
「出来ません」
「なら、せめて真紀さんに連絡させて下さい」
見逃せられないなら、着いていくしかないのだろうけど、何されるかわからない状態でホイホイ行けるわけがない。
真紀さんにはひと言連絡を入れないと、と携帯を取り出す。



