きっぱりと告げるが、「ふん」と鼻で笑われる。


「真紀が戻るつもりがないなら、説得するしかないわ。真紀は才能がある。医者として腕が立つわ。町の小児科で収まるような人ではないの。私になら真紀の最高の環境を用意できる」
「ですから、そもそも真紀さんは戻るつもりはないって……」
「戻らせるのよ」


言い切る麗香さんに唖然とする。話が通じないとはこのことだ。
麗香さんにとって、真紀さんが心臓外科に戻ってくれないと自分との結婚も厳しくなるとわかっている。だからこそ、何としてでも心臓外科に戻って欲しいのだ。


「麗香さんは、本当に真紀さんが好きなんですか?」
「え?」
「私は、好きな人には少しでも楽しく仕事をして欲しい。やりがいをもって欲しい。小児科は真紀さんがやりたかったことなんです。町のお医者さんをすることに夢を持った。私はそれを潰すような真似はしたくないです」


声に力を入れてキッパリと麗香さんに向かって言うと、今度は麗香さんが言葉を失った。