心さんと藤堂先生と私の3人は、広いリビングのテーブルを囲むように座っている。
目の前にはコーヒーが出されており、藤堂先生の部屋に入った途端に心さんが「飲み物ほしいよね」と自分の家のごとく普通にキッチンに立って入れ始めた。
その間も、藤堂先生は私の手を握って離そうとしない。
なにこれ。なにが起きているのだろう。
事態を飲み込めないでいる私はひたすらにボーッと成り行きを見守るに徹し始めていた。
「朝比奈? どうした、まだ調子悪いか?」
藤堂先生が気遣わしげに私を覗き込むが無言で首を横に振った。
「里桜ちゃん、無理しなくていいよ。真紀は強引だから」
「俺のせいか?」
「全部真紀のせいだよ。真紀が中途半端な事をしなければ、こんなにこじれることはなかったんだ」
心さんは少し拗ねたような口調で本題に移ろうとしていた。



