親しくなって、忘れていた。藤堂先生は来るもの拒まず、女たらしの遊び人だ。 彼女はいないってことばに騙されていた。 藤堂先生はなにも変わっていない。 私がひとりで勘違いしていただけなんだ。 「バッカみたい」 バカみたいだ、私。 危うく藤堂先生に騙されるところだったんだ。 深入りする前に思い出せて良かった。 「良かった……」 そう言い聞かせながら、浮かび上がってきた涙を枕で消し去った。