既に空っぽの教室の、隅に唯一置いてあった、合唱コンクールのトロフィーを眺めて、溜息をついた。

もう、三月が終わる。
直に桜も花開くであろう。

そうしたら、進級して、クラスも変わって、もう、友達とは疎遠になるのかもしれない。

そう思うと、悲しかった。

一年間。
たった、一年間だ。
それは、長かったのか、短かったのか。

転校して、人並みではない遅さの初恋も、それに伴った苛めも、全てを忘れて清々していた筈なのに。