「結局私には何もできないのよ」
小さなヤシロまで戻り赤鉛筆をムカデじいさんに渡してアリスは言いました。

「そうじゃな。世の中たいがいはそんなもんじゃな。
でもその気持ちは捨てずに心のタンスに大事にしまっておくといい。
いつか役に立つ日がきたらその時すぐに取り出せるように。
捨てたらだめじゃよ」
とムカデじいさんはウィンクしたような、
しなかったような、
でもアリスはしゃくぜんとしませんでした。

「ムカデさん物知りだから知ってたら教えて。
私はどうやったら帰れるの?」
「そりゃ、帰りたいって思ったら帰れるはずじゃよ。
ここに来たいって思ったから来たように」
「え?そうなの?  そうなのかなぁ?」
「ここに来た人はみんなそうじゃったよ」
「ここに来たのは私だけじゃないんだ」

その夜アリスは小さなヤシロの中でゆっくり眠りました。
そして久しぶりに夢を見ました。