「おいしそうな卵ですなぁ〜」
と聞いたことのある声です。
見ると大食らい猫がイスに前足をかけテーブルにポツリと残された卵をじーっと見ていました。
なるほど鳥さんたちが逃げるはずです。
「ゆで卵〜に、目玉焼き〜、それとも生で〜卵かけご飯」
大食らい猫は歌うように言いました。
アリスはできるだけ冷静に、さも当たり前、という風にこう言いました。
「あら残念ね。
これは私が温めてふ化させることになったの」
そう言うとできるだけゆっくり、そしておごそかにその卵を手に取るとポケットにしまいました。
その様子を大食らい猫は残念そうに見ていました。
アリスは決してすきをみせないようにして、
「それじゃあ猫さんさようなら」と言ってその場をゆっくり立ち去ります。