俺が引っ越してきた街にはとても綺麗な桜が咲いていた。


俺の新しい家からは桜の並木道があり、上を見ながら歩いていると、心が落ち着いた。


新しい家の準備だのでやることも無く暇だったから、遊び半分で歩いてる途中で見つけた神社に入った。


そこには綺麗な木々たちが生い茂っていて、思わず見とれた。


とりあえず歩こうと思って、寺の裏の林の中に入っていった。


迷ったらやばそうだけど、大丈夫かなと思って進んだら、ある場所を見つけた。


そこにはめちゃくちゃでかいヤマザクラの木が立ってて、側に行くとそこからは海が見えて…

絶景だった。


だからここは俺の秘密基地にしようと思った。



俺は一旦家に帰ろうと思って、来た道を元に戻った。



帰ってる途中で出会ったのが白鳥 蕾(しらとり つぼみ)


俺は何故か、彼女に話しかけていた。

何故だか、寂しげに桜を見上げると横顔を見た瞬間、話しかけずにはいられなかった。


だが俺は自分の行動に後悔した。


[奇跡って信じる?]


とか何とか、意味不明な質問をした。

何言ってんだ俺。


最悪だと思っていた時、彼女は言ったんだ。

[私は奇跡があるかどうか分からないけど、お母さんが、奇跡は信じて望めば起きるって言ってたよ?]



俺はその答えを聞いて、驚いた。

というよりも、俺は目を奪われた。

彼女の笑顔に。



それから俺は彼女に、つぼみに秘密基地を教えて、他にも色んなことを教えた。

空の事、星の事、雨の事、花の事、俺が引っ越してきた理由、他にも沢山。


話してるうちにどんどん好きになって言った。


つぼみの花みたいに可憐に、優しく笑う顔を見るたび、心臓が破裂するかと思ったぐらいに。




それから二ヶ月ほどした時に、いきなりつぼみから避けられるようになった。


昨日までは普通だったのに、突然。


俺は何故だか分からなくて、つぼみの父さんに聞いた。

そしたら、つぼみの母さんが事故で亡くなったって知った。


俺は何も出来なかった。


悔しくて仕方が無かった。


だからずっと、毎日、学校帰りに秘密基地に行き、つぼみが来るのを待った。



一週間が過ぎた頃、俺はいつも通り秘密基地に向かった。


秘密基地に着いたら、桜の木の下に横になって、海を眺めてた。


すると突然、足音が聞えた。


まさかと思って振り返ってみると、そこにはつぼみがいた。


つぼみは何で?って顔してたけど、そんなのお構い無しに気付けば俺は、言いたいことだけを言っていた。


[泣いていい]

[我慢すんな]

[頑張ってたんだよな]


って、思ってたことを次々と言っていた。





つぼみは俺の前で泣いた。


たくさん涙を流してた。



そして、泣いた後にはいつもの可憐で花みたいな笑顔だった。