それから私は笑顔を作る癖がついてしまった。 でもその分、辛い時はゆきくんが私の側に居てくれて、泣くのを許してくれた。


ゆきくんが泣きたい時は、私がゆきくんの側にいて、泣いていいよって言った。ゆきくんが私にしてくれたように、私もゆきくんの側に居たいと思ったから。



そうやって私達は2年生、3年生、4年生と一緒に成長して行った。


いつしかゆきくんは、私の好きな人になっていた。


ゆきくんはどうなんだろうってドキドキして、眠れない日もあった。




そして突然、その日はやってきた。









3月9日
私とゆきくんは五年生


もうすぐ卒業式だ


この日は在校生は準備だけで終わりだった為、お昼すぎには帰れた。





私とゆきくんはいつもと同じように、秘密基地へ向かった。



この時のゆきくんはいつもと少し違った。




「つぼみ、話がある」

秘密基地に着いてすぐ、ゆきくんが言った。


「なぁに?話って」


「つぼみ、俺、卒業式には出れない」


「えっ?なんで?どこかお出かけ?」


「ううん、出かけじゃない。帰ってこないから。」


「え?帰ってこないって、え?どういうこと?」


「俺、卒業式の日、引っ越してくる前の家に戻ることになった。」


「え?」


「元々ここに来たのも父さんの仕事の都合だったんだけど、もうその仕事も済んだから、帰るんだって、だから卒業式には出れない」


「え?ゆきくん、引っ越しちゃうの?」

「うん…」


「居なくなっちゃうの?」


「うん…」


「やだ、やだよ」


「ごめん、つぼみ」


「なんでぇ?私、ゆきくんと同じ中学校行きたかった」


「うん」


「ふっ…え」


「つぼみ、泣かないで」


「うぅ…っ」


「つぼみ、約束する。絶対にまたここに帰ってくる。またここに帰ってきて、つぼみと一緒に同じ高校に行く。」

「俺、4年後の卒業式、つぼみの誕生日の日に帰ってくる。んで、俺の誕生日の日に二人で一緒に入学しよう。」


「だからそれまで、待ってて、つぼみ」


「うぅ…っ、わかっ、た、待ってる、ずっと待ってる」


「ありがとう、つぼみ」


「うん…っうぅ」


「んーー、泣き止まないつぼみに笑顔になる魔法の言葉をかけようかと思ったけど、やっぱりやめる」


「え、なんで?気になる!なに!?」


「うーん、今度言うよ」


「なんで〜?」


「なぁ、つぼみ」
「俺、絶対にまたここに帰ってくる。そしたらいまの秘密、教えてやるよ
秘密基地でな、約束だ。」


「うん…分かった、絶対だよ?絶対に教えてね!」


「おう、だからさ、その印と言っちゃ何だけど、これ、持ってて」


「なに?これ、ペンダント?」


「うん、クローバーのペンダント」
「知ってるか?クローバーの花言葉」


「花言葉?」


「うん、クローバーの花言葉には「約束」っていう花言葉もあるんだ。」


「そーなんだ…」


「おう、だから持ってて。つぼみが持っててくれる限り、俺は何があっても約束を果たすから、遅くなってでも、絶対に、地球一周してでも果たしに来るよ」


「うん、分かった、絶対待ってる。」
「地球一周してでも、呼んだら絶対に帰ってきてね、絶対に秘密基地でまた会おうね!」


「おう、約束だ」

「約束」





「「またね!」」

















そしてもう、次は無かった。