side misaki

チクッタクッチクッタクッ

誰もいない部屋で時計の音がする
今日も私はひとり

私 ミサキは重い腰をあげてシャワーを浴びることにした

昨日も飲みすぎたな
頭が痛い
しかし今日は指名のお客さんが来る予定だった
出勤しないわけには行かない

私はVIVIANというキャバクラで働いていた
指名はそこそこ 何度も通ってくれるひとが数組いる程度だ
縁があってもう2年ここにいる
最初はキャバクラなんてダメな大人がやってるもんだとおもっていた
だけど働いてみると下手に社会に出るより大変だし普通のお客さんばかりじゃない
ベロベロに酔っ払ったお客さんを相手にするわけだ
舐めてかかって働き始めた訳だが
思いのほかやりがいもあるし頑張れば頑張った分お給料もあがる
キャストの女の子達ともうまくやってる
ほかの店から高時給なスカウトも何度もされたがなんだかんだ私はVIVIANがすきだった

シャワーを浴び終わって肩まである髪を軽く拭いてまとめお気に入りのパックをする
肌に水分が浸透していくのが分かる
毎日毎日しっかりとスキンケアをしないとすぐ荒れてしまう私の肌
学生の頃に潰してしまったニキビが茶色いシミになってしまってる
汚い肌 ほとんどない眉毛 小さい目 低い鼻 顔のパーツすべてが気に入らない
すっぴんの時は鏡を見るのがほんとに嫌だ

髪を乾かして
いつまでたっても消えないシミにコンシーラーをぬって隠していく
まるで自信の無い私の心も隠すように
元々人と話すことが苦手な私はそうやっていつも自分を隠すように生きてきた
だからこの茶色いシミと共に私の心も隠してしまおう
カラコンを入れ狭い二重を広げアイラインを大幅にひいてつけまもつける
こうやって時間をかけて夜の私が出来上がってゆく


7時15分
もうそろそろでようかな
お気に入りの黒のタイトスカートを履いて淡いブルーのブラウスに袖を通しネイビーのピンヒール

今日も大丈夫

玄関にある全身鏡を見てそう暗示をかけると
私は店へと向かった