「あ、翠ちゃん!」


食堂へ行くと、小雪が翡翠に声をかける。


「聞いて〜土方さんさ、マヨネーズ好きなんだって!マヨネーズって美味しいのかな?」


「…そこそこ美味しいんじゃないですかね?」

そう言いながら土方の方を向いた翡翠だったが、すぐ目をそらす。

「(マヨネーズ片手に持ってるし…)」

よほど好きなのだろう、と思い椅子に座る。

「…今日は、頑張ろうね」


「…はい」

大丈夫、と笑いかけてくる小雪に、翡翠はほっとした。


しばらく黙って食べていると、小雪が不意に口を開く。


「そういえば…近くに新しい雑貨屋さん?みたいなのができたらしいよ」


「はぁ…それがなにか」


「行こうよ!今日まだ時間あるし、ね?」


小雪はキラキラした目で翡翠に言う。

翡翠は首を傾げ、考えこむ仕草をした。


「でも私、そういうのにはあんまり詳しくないしなんていうか…」


「目立つかも、って?」

「っ…!」


―――この人にはなんでもお見通しなんだ…

右耳の下あたりで結わえた髪をつまみ、翡翠は小さくうなずいた。



「大丈夫!心配ならフードかぶって行ってもいいから!」


「え?」


「さぁそうと決まれば準備だね!」

「ええ?!」


小雪はニッコリ笑うと、空の食器がのったお盆を持って席を立って行った。



「えぇ…?」

翡翠は口を開けたまま、ただ固まる。

―――心配ならフードかぶって行ってもいいから



「…す、少しだけ見るくらいなら…」

翡翠は髪を弄びながら言うと、席を立った。