旋律〜気持ちを音に乗せて〜

「いった?!」
え、なに。ちょ、え?
血出てないよね?え。てか、え?
「あ、悪りぃ。」
ドアを開けたのであろうそいつは全く悪いとは思ってない様子で謝ってきた。
私はおでこを抑えながら頭上の顔を睨み付けた。
が、こいつは全く動じなかった。むしろ倍の目つきでにらみ返された。
怖。え、この人怖。
「…お前、さっきまでここで歌ってた?」
唐突にそんな質問をされ私は、こくん。と縦に首振った。
ふーん。と興味なさそうな返事が返ってきたから、私も帰ろうと思い立ち上がった。
あ、割と背が低い。私とそんな変わんないな。
そんなことを思いつつ横を通り過ぎた瞬間、
「下手くそ。」
たった4文字が私の耳に入ってきた。
下手くそ?私が?18年歌い続けた私が?
足から根が生えて、地面から動けないようにしているみたいな感覚に陥った。
動けない。いや、動かない。
早く立ち去りたかった。これ以上いたらまずい。
本能がそう言っている。
そして
「基礎がなってない。張りがない。全く魅力のない声だな。」
言われ放題だ。
「だったら、あんた歌いなさいよ。」
こんな大きなことが言えるんだ。
相当うまいに決まってる。
「いいぜ。」
スゥと息を吸い、声を出した。
びっくりするぐらいヘッタクソな声が。
開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。