「もしかして、あんたまた誰か振ったの?」


私は昼休み終わり、

教室に入ってきた奏にそう問いかける。


私がそう思った理由は、

昼休み前、女子に呼ばれた奏が、

昼休み終わり、

大した変化もなく帰ってきたから…、

というもの。


「ん?あー、うん」

「で?どんな振り方したの?

あんたのことだから、

酷いこと言ったんだろ?」

「酷いこと言った?失礼な。

俺が言われたよ」


どうせいつものパターンだろ。

そう思いながらも、

驚いたそぶりを見せて、聞いてみる。


「えぇ!?

あんたが酷いこと言われたの!?

想像できないんだけど。

なに言われたの?」

「俺の魅力についてなんだけどな?」

「ん」


そこかよ。

やっぱりいつものパターンじゃん。


「優しくて、見た目とか

部活してるところがかっこいいって」

「ん」

「……。酷くね?」

「え?」


こいつ、なんにも変わらない。

そろそろ、その性格のヤバさに気づいた方がいいだろ。


「どこが酷いの?」


私が一応そう尋ねると、

「え、わからないの?」

と、逆に聞かれ、

正直に

「うん」

と答えると、

「はぁ」

と呆れたようにため息をつかれた。


ため息をつきたいのはこっちだよ。



「俺の魅力、もっとあるだろ?」

「は?」

「んだから、

俺の魅力はこんだけじゃないだろ!?」

「あんた、バカじゃないの?」

「んぁ?」


私はスゥーと大きく息を吸うと、

いつものようにまくしたてた。


「あのさ、あんたが女子にコクられるたびに言うけど、あんた、自意識過剰すぎなわけよ?わかる!?それとさ、あんた、どうせいつも通り、『俺の魅力そんだけしか言えないとか、俺のこと好きじゃないんだろ?』的なこと言ったんだろ?まじそれ、最低だから!人の気持ち踏みにじってよぉ!まぁお前はこんなこと言っても何も思わないんだろ?このっ、このぉっ……!」


最後の方、ぐちゃぐちゃだよ…。


「……。でも、俺のみ……」


奏の言葉を遮るように、

キーンコーンカーンコーン、

と、チャイムが鳴った。


これも、いつも通りだ。


「……」


奏は、

納得がいかない、とでも言うように、

黙り込んでいる。


「ほら、チャイム鳴ったよ?

自分の席に戻ったら?」


私が自分の席に戻るように

奏に促すと、奏は

「ん」

とだけ言って、自分の席へと戻って言った。



これが、毎日のように続いている…。