ん? って、優しい顔。
瑠偉くんのこんな表情、久しぶりに見た。
昔はこうやって、いつも話を聞いてくれたっけ。
まとまりのない話でも根気強く聞いてくれた。
いつも私の味方でいてくれた。
(あ、そっか……)
瑠偉くんは、私とお母さんが何か揉めているのを聞いて窓からやって来たんだ。
お母さんと顔を合わせないように、邪魔されないように、私の話だけを聞いてくれるために。
変わってないな。
それなのに、私は……。
変わったのは、私の方かもしれない。
「さっきね、雑誌の記者って人が来たの」
「うん」
「2年前のことで聞きたいことがあるって。たぶん、事故にあった時のことだと思うんだけど」
「2年前……」
「あの、瑠偉くんは知ってるんだよね、あの時、何があったか」
瑠偉くんと事故の時の話をするのは、入院していた時以来。
決してカマをかけるつもりではなかったけれど、確信に近い気持ちで問いかけた答えは、困ったように泳いだ瑠偉くん瞳に表れていた。
私だけが知らなかったんだ。
私のことなのに。
「ごめんね、別に瑠偉くんを責めるつもりはないよ」
「分かってる」
「記憶がないことを良いことに呑気なもんだよね。事故だって信じ込んでいたよ」
「それは、花菜を傷つけないために」
「そうだよ、私のため。私のためにやったことが、」
唇が震える。
口の中に酸っぱいものがこみ上げてくる。



