あしたの星を待っている



「瑠偉くん!?」


びっくりした。

窓ガラスを叩いていたのは瑠偉くんで、彼は隣の家の窓枠に足を乗せた状態でこちらの格子にぶら下がっていた。

もし間違って下に落ちたら、大怪我しちゃう。


「危ないよ、何してるの!」

「いいから、手貸して」

「そこ、尖ってるから足、気を付けてね」

「痛ぇ、それ先に言えよ。思ったより狭いな、昔は余裕だったのに」


そりゃ、そうだよ。

瑠偉くんが入った窓は、隣の家の瑠偉くんの部屋と面していて、子供の頃はよくこうやって格子をつたってこちらに来ていた。

下まで降りるのが面倒くさい、とか。

スリルがあって面白いとか。

そんな理由だったけど、小学生の頃とは体の大きさも重さも違うんだよ。

無茶するにも程があるっての。


「心臓が止まるかと思った」

「相変わらず、ビビリだな」

「瑠偉くんが無茶するからでしょ。何しに来たの」

「この前、うちに来た時、これ忘れてたから」


あ、シュシュ。

そういや前に瑠偉くん家でシャワーを借りた時、外してそのままだったかも。

でもわざわざ、それを?

ポストにでも入れておいてくれたら、よかったのに。


「なんかあった?」


シュシュを私に手渡した瑠偉くんは、勉強机の上に座った。

上半身を後ろに捻って、本棚に並んだ星の図鑑を眺めている。


「なんかって……?」

「さっき、おばさんが道で大声出してただろ? 喧嘩でもしたか」

「喧嘩っていうか」