あしたの星を待っている



仕事が忙しい瑠偉くんのお母さんは、いつもリビングで寝てしまっていて。

起こしても起きなくて洗濯も掃除もできてなくて、そんなお母さんに瑠偉くんは怒りながらも布団をかけてあげて、吊ったままの洗濯物を畳んで、掃除機をかけて。

不愛想だけど、優しいんだ。

そんな瑠偉くんは、家事スペックがどんどん高くなっていって、これならいつでも嫁に出せるねって笑ったりしたよね。

楽しかったなぁ。


「雨、止んできたな」

「あ、ほんと?」


窓際に立って外を見ている瑠偉くんの近くに行こうとして、あら? と思った。

テレビボードの下に積まれた雑誌の中に、カメラ雑誌があったからだ。


「フォトステだ、懐かしい! まだ続いてるんだ、この雑誌」

「いや、それは」

「昔はよく投稿してたよね、今もしてるの?」


フォトステには読者が写真を投稿するコーナーがあって、よく撮れているものにはプロのカメラマンから講評を貰えるため応募する人が多いらしい。

瑠偉くんはそのコーナーの常連で、いくつか写真を載せて貰っていた。

そしてこれは内緒だけど、講評するプロのカメラマンの中に、彼のお父さんもいた。

『コネって思われたくないから、絶対言うなよ』

それが瑠偉くんの口癖だったけど、彼の作品を見れば、コネだなんて言う人はいないんじゃないかな。

そう思うくらい、瑠偉くんが撮る写真は綺麗だった。



「……おじさん、どこ行っちゃったんだろうね」