あしたの星を待っている



「とりあえず、風呂行け」

「う、うん」

「適当に着替え持ってくる。あと制服、洗濯機使っていいから」

「家に帰ってからするから、いいよ」

「臭くなってもしらねぇぞ」


くさく……って、

あぁ、でもお母さんがいつ帰ってくるか分からないし、瑠偉くんの言う通り、雨に濡れたまま置いてたら臭くなっちゃうよね。

遠慮してる場合じゃないか。

雨はまだまだ止む気配がない。

曇りガラスの向こうから聞こえるザァザァという音に耳を澄ましながら、そういえば昔もこんなことがあったなぁと思い出した。


『花菜、走れ! 雨だ』

『待ってー、カミナリこわいよぉ』


10歳くらいだったかな。

遊びに夢中になっているうちに帰るのが遅り、気が付けば外が真っ暗だった。

私は夜になってしまったんだと勘違いして半泣きで、早く帰ってきなさいというお母さんの言いつけを守らなかったから空が怒って雷を鳴らしているんだと怯えていた。

雨はどんどん強くなって。震えるくらい怖くて。

そんな私の手を瑠偉くんはずっと握り、励ましてくれたっけ。

俺がいるから、大丈夫だからって。


きっと瑠偉くんだって、怖かったはずなのに。