あしたの星を待っている



それじゃ、と電話を切った頃には、雨は本格的な降りに変わっていた。

夏特有のゲリラ豪雨だ。

突然の雨に傘のない人たちは走り出し、道路はあっと言う間に水浸しになる。

私は折り畳み傘を持っていたので広げてみたけど、跳ね返る水で靴は既にびしょ濡れだし、横殴りの雨で傘が傘の役目を果たしていない。

もうなんか、抵抗するだけ無駄なんじゃ……。

そんな開き直り気分で顔だけは死守しながら、雨宿りすることなく家路を急いだ。


「あれ」


けれど、この角を曲がれば家が見える、といったところまで帰ってきて、違和感を覚えた。

庭の洗濯物が出しっぱなしになっている。

完璧主義者のお母さんが入れ忘れているはずないのになぁ、と思いながらインターフォンを押すけど、反応がない。

まさかと思い、玄関のドアを引いてみたけど鍵か掛かっていて――。

どうしよう、鍵、持ってない。


「おい、どうした?」


呆然と立ち尽くしていると、隣の家の窓が開いた。

声の主は誰かと確かめるまでもなく、瑠偉くんだ。彼はこちらに身を乗り出して、ずぶ濡れになった私にタオルを投げた。


「おばさんいないんだろ。こっち来れば」

「や、でも」

「風邪を引きたきゃ、ご自由にどうぞ」