もしかして、葉山先輩を追いかけて来た、とか。
まさかね。
葉山先輩は黒沢さんを知らないみたいだし、2人が話しているのを見たこともない。
それに、黒沢さんは瑠偉くんと仲良くしているわけだし、バイトだって一緒で、補習やカウンセリングだって付き添ってもらってて、電話もするんだ。
それってもう付き合ってるじゃん。
よりによってあんな子と。
――なんか、面白くない。
「先輩」
『どうした? 花菜から電話って珍しいな』
「声が聴きたくなって。勉強中でしたか?」
『いや、ちょうど休憩しようと思っていたところだよ。そんな可愛いこと言ってくれると会いに行きたくなるよ。もう部活終わった?』
「今、帰りです」
『ほんとに会いに行こうか?』
優しい声。
これが私を騙している声?
そんなわけないじゃない。
「だめです、先輩は勉強しないと」
『はは、俺の彼女は厳しいな』
「そうです、知らなかったですか?」
あっ、雨……。
『うん。好きなところがまた1つ増えた』
西の雲が怪しいなと思ったと同時に、ポツン、ポツン、と水滴が落ちてきて。
地面が黒く染まっていく。
「デート、楽しみにしてますね」
『行きたいところ考えておいて』



