そうだけど、何か引っかかる。
なんだっけ、前におかしいなって思ったんだけど、確か……。
「バスケ部のエース兼キャプテンで、生徒会役員なんでしょ。おまけに顔も良くて人当たりもいい。この学校で先輩を知らない生徒なんていないでしょ?」
「うん、多分」
「告白は向こうから?」
「うん」
「こう言っちゃなんだけど、夕里さんって別にどこにでもいるようなタイプで特別、美人ってわけでもないのに、先輩に好かれるなんてラッキーだよね」
それ、本人に直接言う?
面食らって黙っていると、黒沢さんはさらに続ける。
「おかしいって思わなかった? 騙されてるかも、とか」
「先輩はそんな人じゃないよ」
「純粋なんだ」
馬鹿にしたような笑い方に、カチンとした。
悪い人じゃない? あぁ見当違い、やっぱり嫌な人。
「私、もう行くから」
「気を付けた方がいいよ、ああいう誰にでも優しくてニコニコしている人ほど、裏があったりするもんだから」
「黒沢さん、あのさ」
「あっ、ごめん。矢吹くんから電話。じゃぁーね」
なんなの、なんなのー。
沸点が高いと言われる私でも、今の黒沢さんの発言には腹が立って髪の毛を掻きむしりたくなる。
裏があったりするものって何?
……あるけど、確かにちょっと当たってるけど、それだけじゃん。別にそんなの気にしてないし、私にだけ見せてくれた一面だし。
あぁ、思い出した。
黒沢さんは転校してきた初日に、葉山先輩の名前を知っていた。
たぶん、彼女はこの学校に来る前から先輩のことを知っていたんだ。



