「花菜ちゃん、あと何周?」
「2周。ななちゃんは?」
「同じ同じ! 残り、一緒に走ろう~」
「うん」
お互い息があがっている。
だけど、ラストまでどうにか頑張れそうだし、誰かと一緒に走った方が楽だ。
流れる汗をタオルで拭いて、何となしにななちゃんの方へ視線を向けたとき、彼女の耳がきらりと光ったのが見えた。
「ななちゃん、それピアス?」
「うん、この前、開けたんだ」
「可愛いね。でも痛くなかった?」
「全然~、ちょっとチクッとするくらいだよ。花菜ちゃんも開けてみたら?」
「え、私はいいよ」
「なんで? 運勢変わるよ~。って、花菜ちゃんは変える必要ないか。今、幸せだもんね」
スニーカーが地面を蹴る音が響く。
幸せ、なのかな。私。よく分からない。
両親が揃ってて何不自由なく暮らせていて、学校にも通えて友達もいる。
彼氏もできた。
世間一般でいうなら幸せってことだろう。
たけど――。
「花菜、お疲れ」
「先輩」
「この後、休憩だろ? ちょっとこっちおいで」
葉山先輩はこの合宿で部員のアドバイザーのようなポジションを担っていて、各チームのスケジュールを把握しているようだ。
人目を避けるようにして連れて来られた場所は、常緑樹で囲まれた小さな庭園で、誰もいないことを確認したあと、おいで、と抱きしめられた。



