おお、なんだか店員さんっぽい。
いや、実際に店員さんなんだけど、いつもの瑠偉くんと違って大人っぽく見える。シワのない黒いシャツを腕まくりして、腰から下はギャルソンエプロン。
注文を取る時は床に片膝をついて、お客さんと目線を合わせている。
少し離れたテーブルの女性2人が、はしゃいだ様子で瑠偉くんに話しかけた。
「なんか、人気だね」
運ばれてきた紅茶に口を付けながら七海に目配せすると、彼女はぼんやりとした表情で、そうだね、と呟いた。
スプーンで珈琲をかき混ぜているものの、飲む気配はない。
「七海?」
「……ん、あ、ごめん何?」
「七海の好きな人って、」
瑠偉くんだよね。
そう言いかけて、今度は私の方が固まってしまった。
カフェの奥で行ったり来たりする黒く艶のある髪、「おはようございます」というややハスキーな声、ツンとした表情、すらりとしたスタイル。
瑠偉くんと同じ黒いシャツと、黒のショートタイプのエプロンを付けたその女性は、こちらにやって来て、「お待たせしました」とケーキをテーブルの上に置いた。
「黒沢さん」
「びっくりした? 私もここでバイトしてるの」
「そう、なんだ」
「どうぞ、ごゆっくり」
宅配業者が運んできた段ボールを黒沢さんが重そうに抱えるのを見て、瑠偉くんがさっと受け取ってあげている。
ありがとうって笑う彼女に、いいよ、と頷く瑠偉くん。
びっくり、なんてもんじゃない。
一緒にバイトしてるって、偶然じゃないよね?
七海が言ってた通り、付き合っているのかな。
でも、変なの、どうして私、こんなに動揺しているの。



