「私、ケーキセットにする。花菜は?」
「うーん、紅茶と……」
実は洋菓子が苦手なんだよね。
お饅頭とかおはぎとか、小豆の甘さならいくらでも平気なのに、どうも生クリーム系が体に合わなくて。
でも、私がケーキを頼まなかったら、七海だって気を遣って頼みづらくなるよなぁ。
そんなことを考えながらメニューを眺めつつ、七海の方に視線を向けると、彼女は私の後方を見つめたまま固まっている。
どうしたのかと声を掛けかけて、その理由はすぐに分かった。
「矢吹くん……」
え!
七海が発した呼び名に驚いたのと同時に「いらっしゃいませ」と聞き覚えのある声がした。
お店ではごく普通の、店員さんがお冷を出してくれる行為が、不思議に感じてしまうほど黒いシャツを着た瑠偉くんが浮きだって見えた。
目が合った彼は、バツの悪そうな顔をしている。
バイトって、ここだったんだ。
「いやぁ、びっくりした。ね、花菜」
「うん」
「注文は、何にする?」
「私はケーキセットで、珈琲と苺ショートにしようかな。花菜は?」
「あ、えっと」
そうだった、まだメニュー決めてなかった。
紅茶と、あとは……と、言いかけたところで、瑠偉くんがメニューの中からチーズケーキを指さした。
「これ、生クリーム入ってないから」
「ほんと? じゃぁそれにする」
「かしこまりました」



