あしたの星を待っている



ああ、本当にエネルギーが消耗する。

恋愛ってこうなの? これが普通なの?

あなた好みになりたい、とか歌の歌詞にあるけど、こういうことなの? 俺の色に染まれって、実際に言われて嬉しかった人っているの?

はぁ……。

先輩とは階段のところで別れ、教室へ戻る途中、思わず息が漏れた。――と、


「でっかい溜息」


え? 今の私に?

声がした方に目を向けると、やはり私へ発した言葉だったらしく、ツンと澄まし顔の黒沢さんが微かに口元を緩めた。


「なんか疲れてる様子だね」

「そんなこと、」

「しんどいって顔に出てる」

「えっ」


パッと顔に手を当てた私に、黒沢さんは、うそ、と笑う。

それから、彼女は手をひらひらさせて、階段の方に足を向けた。


「どこ行くの? 授業始まるよ」

「サボる」

「ええっ」


あ、行ってしまった。

聖ウィステリア女子から来たというから、見た目もさることながら中身もすっごいお嬢様なんだろうと思っていたけど、実際はそうでもないみたい。

具合は悪いって感じでもないのに、時々、授業をさぼっている。

だけど、その自由奔放さが羨ましくもある。

疲れた、しんどい、嫌だ、気が重い、そういうのを私は口にできない。


はぁ……。

2回目の溜息はチャイムの音に搔き消された。