「カバン、貸して。持つから」
「いやいや、そんな」
「こういう時は、素直に甘えるものだよ」
でも、と遠慮する私に、先輩は、いいから、と半ば強引にカバンを取り上げる。
何から何まで迷惑をかけて申し訳ない。
そんな私の心の声が聞こえたのか、
「じゃぁ、花菜は俺の腕を持ってて」
と、この前のように左腕を軽く曲げ、こちらに寄せた。
必然的に近くなる距離。地面に伸びる影が2つ寄り重なる。
2度目なので、前ほど緊張はしない。
それでも気恥ずかしくて下を向いて歩いていると、
「というか、俺にガッカリさせないで」
低めの声が耳元で、響いた。
「先輩? あの……」
「花菜が怪我をしたって聞いて俺がどれだけショックを受けたか分かる? 腫れた手を見せられて冷静でいれるわけないだろ。それなのに、お前はヘラヘラ笑うし」
「ご、ごめんなさい」
そっか、そうだよね、
私、無神経だったな。先輩が怒るのも当然だ。
心配を掛けたというのに、ただそのことだけを勝手に感動して、先輩がどんな気持ちになっていたかなんて想像もしなかった。
思いやりが足りない、浅はかな自分が恥ずかしい。
見上げた横顔は無表情で「あの」と、腕を引くと、
「アイス食べて帰ろっか」
振り向いた先輩は、もう笑顔だった。



