心配してくれたんだな。
それなのに、腕を掴まれることにまだ抵抗を感じる自分が酷く情けなく、申し訳ない気持ちになる。
首筋を伝う汗、伏せられた長い睫毛。
ジンジンと熱を持つ指先は、先輩が当ててくれる氷嚢の冷たさにじんわり溶け、次第に痛みが和らいだ。
「先輩、ありがとうございます」
「当然だろ」
氷嚢を外して腫れのチェックをした先輩が、ニコッと笑った。
先ほどより良くなっているのを確認して、湿布、包帯と手際よく処置していくのは、さすが怪我に慣れている様子だ。
「明日になっても腫れが引かなかったら、病院行こうな」
「はい」
「今日はこのまま帰るようにって。着替えを北野(七海)がまとめてくれてるから、こっちに持ってくるよ」
はい、っと素直に頷いた私の頭をポンポンと優しく叩いてくれる。
先輩が保健室から出て行ったあと、それまで少し離れたところにいた黒沢さんが「へぇ」と低い声を出した。
「付き合ってるの? 葉山先輩と」
「あー、うん。そうなんだ」
「幸運だわ」
「え?」
「なんでもない、私、帰るね」
挨拶もそこそこに、黒沢さんも保健室を後にした。
1人残されて、椅子に座ったまま足をプラプラさせる。
窓の外から聞こえてくる吹奏楽部の音にリズムを取りながら、ふと思った。
黒沢さんはどうして、先輩の名前を知っていたのだろう。



