瑠偉くんの写真が好きだった。
瑠偉くんに写真を撮ってもらうのが、好きだった。
ススキ畑で笑っているあの写真は、一生ものの宝物だと言える私のお気に入り。
なのに、そのせいで瑠偉くんがカメラを辞めたなんて悲しすぎるよ。
「本当に本気で辞める気?」
「だから、何度もそう言ってる、」
「分かった、じゃぁカメラはここに置いて帰ろう」
「花菜、お前、何を言って……」
そこまで言いかけた瑠偉くんは、何かに見惚れるように口を開けたまま固まった。
夕日が眩しいのか目は顰めたまま、1歩2歩と後ろに下がる。
何だろう?
後ろを振り向くと黄昏に染まる街が見えた。
「わ、綺麗だね」
感嘆の声をあげた瞬間、手元のカメラを瑠偉くんが掴んだ。
シャッターを切る音が聞こえる。
角度を何度も変えて、高さを調節して。
何かに取り憑かれるように、ファインダーを覗き込む姿は、ずっと恋い焦がれていた姿そのものだった。
「好き」
ごめんね、いまさら。
でも、好き。
やっとわかった、この気持ち。



