「ちょっと、笑わなくてもいいでしょ」
「いや、だって2時間掛けて来たのに、これとか。笑うしかないだろ」
「そうだけどー」
へなへなとその場にしゃがみ込んで、手元にあった小石をえいっと投げる。
だだっ広くなった大地を転がる石を見ていると、不意に笑いがこみ上げてきた。
「ふふっ、ふふ」
「花菜も笑ってんじゃん。つーか、ここに何しに来たんだよ」
5年の月日は短いようで長い。
何も変わない方がおかしいのだ。
形を変えて、色を変えて、だけど別のものにはならない。
「写真! 撮ってもらおうと思ったの」
「は?」
「はい、これカメラ。昨日、瑠偉くんのお母さんに頼んで借りてきちゃった」
持っていた手提げかばんの中に隠していた瑠偉くんのカメラを取り出すと、彼はびっくりしたように目を丸め。
それから、大きく首を左右に振った。
「カメラは辞めたって言っただろ」
「じゃぁ、どうして捨てずに持ってたの?」
「それは、」
「本当は好きなくせに! 辞めたなんて言わないで。勝手に責任なんか感じないでよ、瑠偉くんは何も悪くない」
「花菜……」



