あしたの星を待っている



店の外に出ると、冷たい風が頬を撫ぜた。

いつの間にか季節は秋から冬に変わっていて、吐き出す息は白く、指先が痛い。

時刻は、午後3時。

ギリギリ間に合うかな?

駅の改札を抜けて、いつもと反対側のホームへ足を向けると、それまで黙ってついて来てくれた瑠偉くんが難色を示すように首を傾げた。


「どこに行くんだよ」

「ちょっとした、ピクニック……?」


我ながら嘘が下手だな。

そんな言葉で瑠偉くんが納得するわけないけれど、彼は眉毛をピクリと動かしただけで、それ以上は何も言わずベンチに腰を下ろした。

あの時も、そうだったな。

家にこもりがちだった瑠偉くんを無理やり引っ張って、電車に乗せて。

かなり強引だったけど、諦めたのか彼は何も言わず、ただ黙って外の景色を眺めていた。


「あ、電車来たよ。乗ろう」


ビルが立ち並ぶ街を抜けて、しばらくしたら山がいくつも現れて、トンネルをくぐって、また山を越えて。今度を川の上にかかる橋を通って。

各駅停車になった電車は、ゆっくりゆっくり私たちを思い出の場所へと運ぶ。

おそらく途中から、もしかしたら初めから行き先が分かっていた瑠偉くんは、流れていく景色をじっと眺めていた。

その横顔が、12歳だった頃の彼と重なる。