『花菜、そろそろ電話を切るよ』
「あ、先輩」
『そうだ、1つだけ。俺たちは2年前に花菜を襲ったけど、追いかけただけでそれ以上のことは何もしていない。っていっても男性恐怖症が治るわけじゃないと思うけど、今までごめんな、ありがとう』
私、何もされてなかった……?
「待って、先輩。今、どこですか?」
『ん、警察』
「えっ!」
『全部、話してくる』
「まっ、」
そこで、電話は切れた。
慌てて掛けなおそうとして、手を止めた。
証拠を集めて追及しようとしていた相手が、自白すると言っているのに止める必要がどこにあるのだろう。全部話すと言っているなら好都合じゃない。
先輩なりの、けじめをつけてくれた。
なのに、胸が痛いのはなぜだろう。
今になって先輩の本音を聞かされたところで、何かが変わるわけじゃない。
それ以上のことはしてない、と言われても、許せることじゃない。
だけど、最後に。
【好きになってくれて、ありがとうございました】
読んでもらえるか分からないけれど、メールを送った。



