ぽろり、と涙が零れた。
なんで、どうして、こんな……。
胸がいたい。
向き合いたいなんて思いながら、全然向いていなかったことに今更、気が付くなんて。もっとちゃんと先輩と話をしていれば、こんな終わり方になってなかったはずだよ。
少なくとも、先輩のことを誤解せずに済んだ――。
「お願い、出て……」
耳にスマホを押し当てながら、念じる。
しつこいくらいの呼び出し音のあと、そろそろ留守番サービスに繋がるのではないかと不安に思ったところ、『はい』と短い声が聞こえた。
「先輩、あの」
『メッセージ読んでくれたの?』
「読みました、ごめんなさい、私、」
『どうして花菜が謝るの?』
クスクスと笑う声が聞こえる。
それは朗らかで優しい、いつもの先輩で、昨日の出来事がまるで嘘だったように思える。先輩は移動中なのか、騒がしい音の中にコツコツという足音が混じっていた。
「1つ、聞いてもいいですか」
『何?』
「”写真の子”ってなんですか」
昨日からずっと気になっていた、先輩の言葉。
それにさっきのメッセージの内容も、2年前の事件より前から私を知っていたような書き方だったのが、胸に引っかかる。
もっと前から知ってたのかなって。
『雑誌で見たんだ』
「え」
『なんだっけな、カメラ雑誌だったと思うけど。そこに載ってた女の子が可愛くてさ、一目惚れだったんだよ』



