「矢吹くん言ってたよ、自分がいることで不安や恐怖を与えてしまっては意味がないから、陰の存在でいい。そうなるためにもできるだけ距離を置きたいって」
「そんな。瑠偉くんを怖いと思うことなんてないのに……」
「不器用なやつだよね。蒔田くんとかとつるんでいるのも、夕里さんが不良っぽい男子が苦手だから一緒にいれば、傍に寄ってこないと考えたんだって」
「じゃぁ、夜遊びしてるって噂は、」
「夜遊び? バイトばっかでそんな暇ないと思うよ」
あぁ、もう本当にバカだな。私のバカ。
自分のことばっかりで周りが全然見えてなかった。
つまらないやきもちをやいて、何もしてくれなかったなんて勘違いも甚だしい。
胸が痛い。
瑠偉くん、ごめんね。
「一度、じっくり話し合いって」
「うん、そうする」
「でも、その前に葉山先輩とケリをつけなきゃね」
「あ、そうだ。先輩のパソコンからコピーした動画なんだけど、山岡さんに渡すのはちょっと待ってもらっていいかな」
「いいけど、警察には?」
「提出する。それでも動かなかったら、山岡さんにリークしてもらう」
これまで何度も事件をもみ消してきたと聞いた。
なら、初めから警察を頼らず、マスコミに流した方が確実に叩けるはず――。そう思うけど、動画に映ってる女の子のことを思うと、まずは穏便に済ませる方法を取りたい。
その思いは黒沢さんも同じようで、快く頷いてくれた。



