あしたの星を待っている



行動力があって、頭が良くて。

大切な家族のために、ここまでできるなんて本当にすごい。

率直な思いを伝えると、黒沢さんは少し照れたように笑い、小さく首を振った。


「すごいのは、矢吹くんの方だよ」

「瑠偉くん?」

「確かに私は行動的だったかもしれないけど、言い方を変えればただの傲慢。1つ間違えれば、友達を傷つけることもあった。矢吹くんは、その逆。何もしていないように見えて実はちゃんと大切な人を傍で見守り続けていたんだよ」


その言葉を聞いた瞬間、胸が痛いような疼くような。

それでいて、温かくなるような不思議な感覚がした。

それは、以前に後藤先生から、

『自分のせいで辛い思いをさせてしまったから、幸せになって欲しい』

という瑠偉くんの言葉を聞かされた時と同じだ。


「誰かが困っている時、すぐさま手を差し伸べて力になろうと奮闘できる人ってもちろんすごいと思うけど、その人の見えないところで傷つかないように力を尽くしたり、必要ならばいつでも助けられるように見守ることができるのもすごいと思う」


そういや、あの合宿の日も。大雨の日も。

昇降口のガラスが割れた時にも、助けてくれたのは瑠偉くんだった。

いつもタイミングがいいなと思っていたけど、そうじゃなくて、いつも私の気が付かないところで見守ってくれていたからなんだね。