「一花、そろそろ行かないと遅刻するぞ。初日から遅刻はまずい。」
私の名前を呼び、早くしろと急かすのは、双子の兄、白山 薫である。
180という高身長と、艶のある黒髪。誰もが振り向くイケメンだ。
おかげで手紙やプレゼントを渡してほしいと言われ鞄の中がパンパンになったり、告白を手伝ってほしいと言われたりして色々大変だった。
自分で渡せばいいのに、と思ったが、兄は女子に冷たい。1人はラブレターを目の前で破られ、もう1人は手作りのお菓子をゴミ箱に捨てられたらしい。
女子の間では、「氷の王子様」とまで言われるほどだ。
だが、私には「甘々王子様」なのだ。
それが兄のファンにバレ、ターゲットを手に入れるには、まず妹から攻略しなければ、となったらしい。
本当に迷惑な話である。
「今年の桜は綺麗だな。」
桜を眺めながらそう言う兄は、妹ながらかっこいいと思う。
「兄さん」
「兄さんは、なんで彼女を作らないの?」
「…ずっと前から、好きな人がいるんだ。」
知らなかった、兄さんに好きな人がいるなんて。
その言葉を軽く流し、クラス表を見て自分の教室を確認する。