深く頭を下げたが、オルキスから冷ややかな眼差しを向け続けられ、ユリエルは怯んだように瞳を揺らした。
そして不機嫌な理由を探るようにオルキスをちらちらと見た後、気まずさを押し殺してリリアへと微笑みかけた。
「お気を悪くされたのなら、ごめんなさいね。あなたも私と同じ色を持ってるようだから、つい気になってしまって」
気を悪くはしていないが、素直に自分の出身地を答えることに躊躇ってしまったのは事実である。
そのことが悔しくて俯いたリリアを、オルキスはそっと引き寄せた。
「同じ色? そうか? よく見てみろ。彼女の方が、ため息が出るほど美しい」
言いながら、オルキスの指先がリリアの髪に触れ、頬をなぞっていく。
瞳を覗きこみ、熱く見つめてくるオルキスに、リリアは頬を熱くさせる。
「オルキス様!」
「……何を騒いでおる」
ユリエルの金切り声に続いて、低く太い声が回廊に響き渡り、束の間、その場の空気が凍りついた。
後ろを振り返ったリリアは、礼拝堂の方から従者を引きつれ近づいてくる男性の姿を見つける。
「父上」
そしてオルキスがぽつりと呟いた言葉を聞き、彼こそがアシュヴィ王その人だと知る。