静かに水面を見つめているオルキスとは違い、リリアは全く冷静でいられなかった。

いつの日か、オルキスと三回目の口づけを交わすことになるのだろうか。

自分のことを知りたいと言ってくれた言葉の裏側で、オルキスはどんなことを考えていたのだろうか。

思いを巡らせれば巡らせるほど、もどかしさが募っていく。

リリアは外套の上から胸元を抑え……オルキスが自分のことを少しでも特別だと思ってくれていたら良いのにと、強く願った。


「……私も、オルキスのいろんな一面をもっと知りたい」


膨らむ思いを我慢できず発した言葉にオルキスが反応したのを感じ取るが、リリアは気恥ずかしさで顔すらあげることができなかった。

出会ってから日も浅いというのに……リリアにとってオルキスは特別な存在となっていたのだ。


「リリア。その言葉、後悔するなよ」


オルキスは足音を立てずにリリアの目の前へと移動すると、あっという間に自分よりも小さな身体を担ぎ上げた。

高さに恐怖を覚えて身を強張らせたリリアを白馬に乗せたあとオルキスも後ろに飛び乗り、白馬をゆっくりと進ませていく。