次々と頭に浮かんでくる希望は、でもオルキスは忙しそうだしという諦めの気持ちに打ち消されていく。

セドマやアレグロやアレフのオルキスへの態度を見ているだけで、やはり彼が高位の職に就いている人間なのだろうということがリリアにも伝わってくる。

よって都に戻れば、彼が自分になど構っている暇など無いのかもしれないとどうしても考えてしまうのだ。

実は昨晩からずっと頭の中で繰り返している希望と諦めに息苦しくなりリリアがため息を吐いた時、白馬が小さく嘶いた。

屋敷から颯爽とした足取りで出てきたオルキスが、アレグロの手前で立ち止まる。


「世話になったな」

「いえ、滅相もない。なんのおもてなしも出来ず、申し訳ございません」


恐縮の声音で返されたアレグロの言葉に、オルキスはゆるりと首を横に振った。

彼の後に続いて出てきたアレフもアレグロに深く一礼をしたのち、リリアにも軽く会釈をしながらその横を通り、屋敷の使用人と共にいる自分の黒毛の馬へと歩を進めていく。

アレフの後ろ姿をぼんやり見つめていると、突然リリアの視界に影が落ちた。

突然被せられた外套のフードを片手で押さえながら振り返ると、いつの間にかリリアの後ろにオルキスが立っていた。