愛しい人とやり取りしているかのような、そんなまったりとした空気がオルキスの周りに流れていることを肌で感じ取り、アレフはついつい笑みを浮かべてしまう。


「なるほど。今のところはオルキス様の片想いということですね」


笑いを堪えながらのアレフの言葉に、オルキスは左右に振っていた手を止め、すっと表情の温度を下げていく。


「なぜそうなる。俺が彼女に恋をしたとは一言も言っていない」

「えぇそうですね。確かに言葉にされてはいませんが」


意味深な顔で言葉を切ってじっと自分を見つめてきたアレフに、オルキスは落ち着かないように目線を泳がせた後、逃げるように窓のそばを離れた。

そしてソファーの背もたれにかけておいた外套を掴んで素っ気なく「行くぞ」と呟くと、一足先に部屋を出て行こうとする。

アレフはふふっと笑ってから、外套の裾を翻して「はい」と返事をし、オルキスのあとを追いかけた。



+ + +



「リリアよ、王子と共に王都に住むことになっても、たまには顔を見せにこの村に帰って来ておくれ」

「村長様。私はすぐにテガナ村に戻ってくることになると思います。だからそんな心配は要りません」