口元が緩むのを必死に堪えているリリアをちらりと見て、セドマは大きくため息を吐く。


「あぁ。そうだ」


その一言で感極まり、リリアは両の拳をぎゅっと握りしめた。


「やった! モルセンヌ! 行ける!」


オルキスは全身で喜ぶリリアを眩しそうに見つめたのち、再びセドマへと視線を戻し、ニヤリと笑いかけた。


「セドマはどうする? リリアはモルセンヌに行けば、この見た目から良くも悪くも人々の注目を集めてしまうことになるだろう。誰かが守ってやらねば」


オルキスに新たな注文を突き付けられ、セドマは天を仰ぐ。


「……仕方ない。俺も一緒にモルセンヌについて行こう。娘一人の護衛くらい立派に勤めてみせる」


引き出せた力強い言葉にオルキスは満足気な顔をし、ちゃっかりと注文を追加する。


「それが良い。ついでに騎士団に顔を出し、その目で現状を見ることも忘れるな」


口元を引きつらせたセドマに、オルキスが肩を揺らし笑い出す。

不愛想ゆえか、それともその身に多く残る傷跡のせいか、セドマを怖がる村人も少なくないというのに、オルキスに恐れる様子など全くない。