それならば、きっとまだアレグロ村長は父のセドマと一緒にいるはずだ。

それを伝えようとオルキスに呼びかけたリリアの声は、アレフの太く低い声にかき消された。


「ですが、奥様から居場所は聞いております」

「どこだ?」

「それがなんと……ちょうど今、セドマ元団長のところに行っておられるようで」


含み笑いと共に父の名前が出たことに、リリアは目を大きくさせる。

元団長とはどういうことなのか。

疑問がふたりに対する警戒心をも引き起こし、自分の名前を告げた時のオルキスの反応を思い出すと、それに対する違和感も簡単に解けていく。

騙されていたかのような悔しさを覚えながら、リリアはアレフだけでなくオルキスからも距離を取る。


「……あなたたち、父にいったい何の用?」

「えっ!? 父って、まさか、セドマさんの娘ですか!?」


リリアが身を強張らせたのを見て取り、驚きと興奮で顔を輝かせ彼女に近づこうとするアレフをオルキスは手で制した。


「俺たちはセドマに頼みごとがあり、王都より会いに来た」

「……父に頼み事?」

「あぁ。話し合いの場にアレグロ村長にも同席して頂きたく、先に彼の元を訪ねさせてもらったが、どうやらふたりは一緒にいるらしい。好都合だ」