リリアは一気に頬を熱くする。

綺麗な瞳に惹かれ夢見心地になるが、すぐにオルキスの連れの男が呆気にとられた顔で自分たちを見つめていることに気付き、慌てて腕の中から脱出する。


「村長に用事があるんじゃ……あれ、でも今……」


彼の連れの男が今しがた屋敷から出てきたばかりだということを思い出し、リリアは眉間にしわを寄せる。


「もしかして最初から、村長の屋敷の場所を知ってたの?」

「俺は、おおよそだけ。だが道案内してもらったおかげで迷うことなく、むしろ良い頃合いで着くことが出来た。心より感謝する」


しかめっ面をしていたリリアだったが、オルキスからの言葉に不思議と嬉しくなり、頭に乗せられた手の温かさに刺々しい感情も消え去っていく。

ほんの少し頬を赤らめながら「仕方ないなぁ」と呟いたリリアに苦笑いしてから、オルキスは男へと顔を向ける。


「アレフ。村長には会えたか?」


黒馬の隣りで顔を赤らめ二人を見ていた男アレフは、問いかけられたことで表情を引き締め、背筋を伸ばしてから、「それが……」と言葉を濁した。


「アレグロ村長は屋敷にいなく、直接お会いできませんでした」