次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい


頬への一発はそれなりに力が入ってしまったためか、手の平がぴりぴりと痺れている。

悪いことをしてしまったような気持ちになる一方、自分に口付けをしてきたくせにあんな言い方をしたこの男に申し訳ないと思う必要などないと熱くなる。

弱気と強気が心の中でひしめき合っているのを感じながら手の平を見つめていたリリアは、背後で男が立ちあがった気配を感じ振り返る。


「そろそろ時間か」


男は近づいてきた白馬にそう話しかけた後、たてがみを撫でながら空を見上げた。

先ほどよりも空は暗くなり、風も強くなってきている。

小さくため息を吐いてから男は馬の手綱を掴み、肩越しにリリアを見た。


「お前はテガナ村の者か?」

「そうですけど」

「村長の元に行きたい。案内を頼めるか?」

「……村長に?……えぇ、良いですよ」


リリアは慌てて立ちあがると、スカートの埃を払いながら歩き出した男の横に並ぶ。

風が舞い上げる髪を手で押さえながらちらりと男に目を向ければ、男も前方から視線をリリアへと移動させ、口元に美麗な笑みを浮かべて見せた。


「ありがとう」


その一瞬、リリアは息をのむ。