近づく距離に胸の高鳴りは大きくなっていく。
それは自分の身体の中で刻む鼓動なのか、それとも男の胸の上にある手の平から伝わってくるものなのかが分からぬまま、リリアは赤き瞳に引き寄せられていく。
「……見つけた」
自分を見つめながら男が紡いだ言葉に、とくりとリリアの鼓動が跳ねた。
優しい響きに心が揺らされ、もう何も考えられなくなっていく。
どちらからともなく瞳を閉じ、柔らかで温かな感触を共有する。
重なり合う唇から甘い痺れが広がっていく。
身体の中で弾けた熱が、鼓動を加速させ、全てを無にしていく。
口付けは止まらない。
繰り返し触れ合うことで、自然と口付けの濃密さが増していく。
男の唇はリリアの中にある初々しい欲望すらも引き出し、夢中にさせ、容易く翻弄する。
荒く息を吐いた瞬間、リリアの目から涙が一滴こぼれ落ちた。
リリアにはこれが初めての口付けだった。
とは言え、見ず知らずの男との口付けに嫌悪感でいっぱいになってしまった訳ではない。
夢中になってしまった自分に対しての驚きと戸惑いが大きくなりすぎて、処理しきれなくなってしまったのだ。
男はハッとし、焦り気味に上半身を起こした。


