「嘘……お父さん、第一王子と知り合いなの?」


村長よりも面識があるような口ぶりだった父を、リリアは信じられない思いで見つめる。


「やはり、わしが連れて行くより父親であるお前と共に行った方が、リリアは王子と簡単に会うことができるだろうな」


いったい自分の父親は何者なのだろう。

それはリリアが初めて抱いた疑問だった。父を見送ることへの不安が今まで以上に増幅し、ちゃんと戻って来られるだろうかと恐怖すら感じてしまう。


「王子の花嫁になれるかどうかは置いといて、見せてやってもよかろう。自分の母が愛した美しい街を」

「村長!」


セドマが慌てて口を挟んだが遅かった。

アレグロの言葉をしっかりと聞き取ったリリアの足が、自然に前へと進み出す。


「お母さんが愛した街……本当ですか?」

「そうだ。リリアの母、ソラナは生まれ育った王都モルセンヌを、とても愛していた」


リリアは短く息を吸い込み両の拳をぎゅっと握りしめると、セドマに身体を向けた。