風が窓をカタカタと揺らす。続けて、「セドマよ」とアレグロの諭すような声が響いた。


「わしはな、そなたら親子が王都に呼ばれているように感じておるよ」

「やめてください。俺はもう王都には……」


首を大きく横にふりながら立ち上がったセドマが明らかに動揺していることを見て取り、アレグロはふっと表情を和らげる。


「以前より、王都に戻るよう打診を受けておったくせに、お前さんはそれをことごとく無視し続けてきた。しかし今、ボンダナ導師に風向きを変えられてしまったせいで、動かざるを得ない状況に陥っている」


アレグロの言葉を聞き、今度はリリアが動揺する番となる。

昔、自分の父が王都に住んでいたことがあるのは知っていた。

そして直接本人の口から聞かずとも、父がしている用心棒という仕事はその時の名残だろうこともリリアは気付いている。

けれど王都に戻るよう求められていたというのは初耳である。


「……お父さんは、今から王都に何をしに行くの?」


湧き上がってきた疑問がリリアの口をついて出た。

「仕事だ」と返されるだろうと思いながらの問いかけは、予想に反し、セドマが気まずそうに瞳を揺らすだけで会話は続かなかった。