剣の腕もそれなりに優れているのだが……やはり、オルキスがあらゆる面で優秀過ぎるため、セルジェルに物足りなさを感じてしまうのは否めない。

大多数の国民が王位を継承するのは第一王子が濃厚だと考え、「オルキスに花嫁を! 次期アシュヴィ王に!」と盛り上がりをみせる傍ら、王都の若い娘たちは「我らのオルキス王子がいけ好かないあの娘と永遠の愛を誓ってしまう」と嘆きの声を上げている。

そこに少数ながら王位継承は第二王子であるセルジェルがふさわしいという声も混ざり合い、たくさんの感情を巻き込みながら、王都は王子と花嫁の話で沸き立っているのだった。



そんな熱を冷ますかのように昨日一日降り続いていた雨も夜半過ぎにやみ、日の出とともにまた王都の新しい一日が始まる。

フード付きの灰色の外套をまとった者を乗せた二頭の馬が、街路に残った雨水を弾き上げながら駆け抜けていく。

王族が住むジャンベル城から、天を突きさすような鋭い三角屋根の時計塔を中心に広がるモルセンヌ市場のそばを通り、そして町外れに続く街路へと進んでいく。

石畳で整えられた路もしばらく行けば土の道路へと移り変わり、いくつかの分岐を右に左へと迷うことなく進んで行けば、やがて彼らの目の前に鬱蒼とした森が現れることとなる。