「母さん。本気なの?」


セルジェルからため息交じりに問いかけられ、王妃は少しばかり目を大きくし、驚いてみせた。


「もちろんよ。これもすべて可愛いあなたのため。あなたの幸せは、やがてわたくしたちの幸せにも繋がります」


偽物のような笑みを浮かべた後、冷ややかな眼差しを王妃から向けられたユリエルは、黙ったままリリアへと歩み寄り、オーブリーに加担するようにリリアの身体を押さえた。

リリアは声に恐怖を滲ませながら「離して!」と繰り返す。

しかし身を捩って逃れようとすればするほどふたりの力に抑え込まれ、どんどん動けなくなっていく。

リリアの目と鼻の先で、王妃が足を止めた。

そしてリリアの髪を乱暴に掴み、強引に顔を自分へと向ける。


「最後までわたくしを楽しませてちょうだい」


言うなり差し出された王妃の手の平に、オーブリーが黒い液体が入った小瓶を乗せた。

手にした小瓶の蓋を器用に指先で弾き飛ばし、王妃はそれをリリアの口へと近づけていく。


「いっ、いやっ!」


得体の知れないものを口の中へと流し込まれたくなくてリリアは首を必死に動かすも、ごつごつとした手に頭を抑えつけられ、とうとう唇に冷たい感触が押し付けられてしまう。

口の中に苦い味が広がっていく。

口を塞がれ、吐き出すことも叶わず、リリアは目に涙を浮かべながら……ゴクリと、それを飲み込んだ。